シーラ・カーン

 「おおきにごちそうさま」タバキは口を舐めまわした。「おやおや、気高いお子様がたのお美しいこと! お目めがなんて大きいんでしょう! みんなお若いですなあ! いやいやまったく、王たる方のお子は、生まれたときから立派な男だと言いますが、そのとおりで」

 タバキは、あからさまに仔を誉めちぎられることほど、きまりの悪いことはないことをよく知っていた。母狼と父狼が不愉快そうにしているのを見て、目を細めた。

 タバキは座ったまま、自分がしかけた悪さを楽しみながら、意地悪く言った。

 「"大きな者"シーラ・カーンが狩場をかえましたぜ。次の月には、この丘で狩るって、あっしに話してました」

 シーラ・カーンは、約三十キロほど先の、ワインガンガ河の近くに住む虎だった。

 「奴にそんな権利はない!」父狼は怒りだした。「ジャングルの掟に従い、前もっての知らせなしには狩場をかえる権利はないはずだ。あいつは、獲物の群れを十数キロ先まで脅かしてしまうだろう。わしは――このごろは二頭分狩らねばならんのに」

 「あいつの母親が"足をひきずる者"と呼んだのも無理はないね」母狼は静かに言った。


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